「生きてるか?」
稜はキルトに訊いた。
「まぁな」
懐から槍を出しそれにつかまりながら立ち上がった。
稜もブレイブに手を近づけ武器へと変え、しっかりと構えた。
「あぁ〜あ、死んでくれればよかったのに」
レイが残念そうにキルトの顔を見て言った。
キルトは舌打ちをし、
「そう簡単に死んでたまるか」
そう吐き捨て、槍の先をレイに向けた。
「さぁ、始めようか!」
キルトが先に斬りこみに行く。続いて稜もレイに向かう。
「・・・楽しくなってきた♪」
レイはそれらをかわし、キルトの脳天めがけ腕を振った。
「ぉわっと!」
キルトは紙一重でよけ、体制を保てずその場に転んだ。
「さっさと立て!」
稜がレイに切りかかりに入った。
稜の目的は相手への攻撃ではなくキルトが立て直す時間を稼ぐための攻撃である。
レイはその場から4,5歩さがって二人を見据えた。
「なかなか息がピッタリだね、仲のいい証拠かな?」
そのレイの言葉に稜が即答で、
「それだけはごめんこうむる!」
「なんでっ?!」
キルトはそんな稜のさらっとした横顔をみてそう叫んだ。
「まぁ・・・どっちでもいいけど!」
レイが二人めがけて突っ込んでくる。
稜、キルトはそれぞれその場から離れ体制を立て直し、レイに向かって走った。
キルトの槍がレイの左腕を、稜の剣がレイの右肩をかすめた。
「ちっ・・・なかなかやるじゃん」
しかし致命傷でもなんでもないレベルの傷、正直転んだだけでもできるような傷だ。「こりゃ長期戦だな・・・」
「そうだな・・・」
キルトの言葉に稜は短く返事をした。
「やってんなぁ」
そんな三人をとある四人組がビルの屋上から見物していた。
「十二聖団と交戦しているとはな・・・」
背が高く、すらっとした男がそう呟いた。
「まぁ、あいつらが俺らの敵かどうかはしらねぇけどな」
こちらも背が高く、しかし体つきは少々がっちりとした男が言った。
「まさかレイちゃんじゃないよね・・・?」
今度は背が低く細身の女が言った。
「敵は敵、排除するのみ・・・違うか?」
また別の男がそう言った。
男の中では背は低いが女よりは高い。体つきは普通である。
「あれがキロゥでないだけいいだろう」
少々体ががっちりとした男が言った。
「何を言うか炎汰(えんた)、その方が好都合だ」
すらっとした男が言う。
「でもさ、フロウ。それだとあの人達死んじゃうじゃん」
細身の女が言う。
「・・・レイだから生きている、とも言えるな。そうだろ?利央(りお)」
体つきが普通の男が言う。
「敵かどうかわからねぇ以上そういうことだな、クロス」
炎汰と呼ばれた男が言う。
「ま、どっちにしろまずは十二聖団だ。いいな?」
フロウと呼ばれた男が確認する。
「・・・そうだな、副隊長さんよ」
クロスの言葉に少しムッとするフロウをが利央なだめる。
「ま、まぁまぁ。隊長である私が頼りないだけですし・・・」
苦笑を浮かべながらクロスに言う。
その言葉に対しクロスは背を向け交戦中の三人に視線を向けた。
「さぁ、とっとと行こうぜ・・・うずうずしてきた」
腰に下げてある刀(この刀の刃は波をうったような形になってます)に手をかけわくわくとした表情を炎汰は浮かべた。
「そうだな、時間はかけねぇ方がいい」
背中に取り付けてある筒から槍状の杖(†マークのような形をしています。先端が刃物になった杖なのでさほどリーチはありません)を出し、フロウは構えた。
「あんまり気が乗らないけど、仕方ないか」
二丁の拳銃(一つはリボルバー、もう一つはマシンガンです)を取り出し、利央はそう呟いた。
「・・・対象はレイ。他二人はその後だな」
クロスは三又に分かれた剣(卍マークのような形をしています。要するに卍の下の部分がまっすぐになってそこが持ち手になる、みたいな)を二本抜きとっさに構えた。
「さぁ、行きますか」
利央の言葉にそれぞれがビルの壁を水平に駆け下り、三人の下へ向かった。
「くっそ!」
キルトは頭から、稜は剣を握る手の方の肩から大量の血を流していた。
「こっちが言いたいわよ」
レイの左腕からは大量の血が流れていた。
「こりゃそろそろ決着つけたほうがいいな」
稜は剣を構えなおしながら言う。
「・・・!?」
レイが突然とあるビルの方を向く。
「なんだ?」
つられてキルトもそっちを見る。
誰だかわからない四人がこちらに向かってくる。
刀を構えた男、杖の先端に刃物がついた武器を構えている男、二丁の拳銃を持つ女、三又にわかれた剣を二本持つ男。
それらの目は殺意を放っていた。
「なんだよ・・・あいつら!」
キルトが一番にその四人に突っ込んでいった。
「おい、ばか!」
稜がとめようとしたがそれは間に合わなかった。
ちなみに服装は炎汰ははかまの袖を切ったような紅い服に足元に近づくにつれすそが広くなっている膝より下くらいまでの長さのオレンジのズボン。
フロウは茶色いコートのようなものに身を包んでいる。
足元くらいの長さまであるロングコートのようなものだ。
利央はいまから実験でもするの?と言わんばかりの白衣に身を包んでいる。
これまた足元までの長さがある。
時折素足が見えるところから下は膝くらいまでの何かをはいているのだろう。
クロスは簡単に言って黒装束。
黒いコートのようなもので腰より少し下のあたりまで身を包んでいて、下も黒いズボン。
そんな連中の前にキルトが着いたとき四人はキルトを無視し、すれ違い際にこんなセリフを吐いた。
「邪魔だ!」
「俺らの獲物はあいつだ」
「邪魔するようならあなたも敵とみなします」
「・・・退け」
炎汰、フロウ、利央、クロスの順でキルトにそう告げ、そのままレイに向かっていった。
レイは驚いた顔で腕を自分の後ろにまっすぐ伸ばして、
「くそっ、ぶが悪いじゃん。ここは引くしかないか」
そう言って消えていった。
「おい!あんたらは誰なんだよ!」
キルトが四人に向かって怒鳴り声で訊いた。
「敵か、味方か。それは俺たちにもわからない」
すらっとした男、フロウが答える。
「ま、まぁまずは自己紹介から」
といって利央が順に名を告げていく。
稜もつられて名を教えていく。
「で、あんた達はいったいなんなんだ?」
稜が名を教え終わった後に利央に訊いた。
「私達は・・・」
「俺たちは十二聖団を追う者だ。大きく指令、化学、戦闘、隠密に分けられた組織だ」
利央を遮ってフロウが答えた。利央は苦笑している。
「その組織がレイを追っていると?ってか十二聖団ってなんだよ」
稜の質問に対してはクロスが答えた。
「十二聖団については我々も詳しくはわからない。だが今後の敵、とだけわかっている。それだけだ」
「おいおい、まさかル・セイドじゃねぇだろうな?」
キルトが四人に対して訊いた。
「正解です」
利央が答えた。
「ほぉ〜、事態は深刻ってことかよ・・・」
理解できていない稜をそっちのけでキルトは物事を理解した。
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