「お前たちはもう少し静かにでないのか!」
ブレイブの怒る声が部屋中に響き渡る。
「うるせぇ!大体原因はこいつだ!」
稜が反論する。キルトは呆れ顔だ。
「あ〜はいはい。オレがわるぅござんした」
「て・・・てめぇ・・・!」
30分ほど前に戻って・・・「おぅ!稜ちゃん!飯できたぞ!」
キルトの似合わぬエプロン姿がキッチンから出てくる。
片手にフライパン。もう片手におたまをもって。
「今日の飯はなんなんだよ」
稜は少しも期待できないと思わせんばかりの口ぶりでキルトに尋ねた。
「今日はハンバーグだ」
「・・・おたまの意味ないだろう」
冷静な突っ込みにキルトは少々困ったがこれならどうだと言わんばかりに
フライパンの中身を稜に見せた。
「煮込みハンバーグだし・・・な」
なるほどという顔をし稜はテーブルに向かい皿を並べ始めた。
その時だった。
「おわっ!」
キルトの持つフライパンが見事に弧を描き稜の頭に激突。
「ぅわっち!」
さっき火から上げられたばかりのフライパンはかなり熱い。
しかも煮込みたてのハンバーグ(&ソース)も顔にかかり大変なことに・・・
「おかげで顔中火傷だらけだ!!」
「だ〜から悪かったって言ってるじゃねぇか」
ブレイブは諦めかけている。二度と静かにならないなと・・・
「・・・はぁ」
稜は大きなため息をつき生々しい傷と火傷を両手でさすっていた。
日付かわって今日は土曜日。珍しく家の中が静かだった。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
稜、キルト、ブレイブは黙って机を囲み何かを見ていた。
そこに記されていることは・・・
「わっかんねぇ・・・数学なんて嫌いだ・・・」
「オレもだ・・・」
「俺にわかるわけがないだろう」
稜がその場に倒れこみ、キルトは天井を見上げ、ブレイブは机に背を向けた。
「ってかキルト!おめぇ23なら高校とかとっくに卒業してんだからわかるだろ!」
「なめるな!オレは高校の数学なんて一回もまともに授業受けたことねぇんだよ!」
自慢げに言うな、ブレイブは口に出さず心の中でそう呟いた。
すると玄関の方から物音がした。
あきらかにノックの音。
「誰だ・・・?」
稜が玄関まで向かう。しかし玄関からは異様なものが漂っていた。
それに気づいたのはドアノブに手を触れてからだった。
突然ドアが蹴破られたのである。
「なっ!?」
危うく巻き込まれるところだった稜は驚きを隠せないでいた。
「お久しぶり〜♪」
そこに立つのはレイ。どうやら場所を突き止めてしまったらしい。
「稜ちゃん!こっから出るぞ!場所が悪い!」
キルトは窓から飛び降りた。
「あぁぁ・・・ここ5階なのに・・・」
でかい叫び声は次第に小さくなっていった。
稜、レイ、ブレイブはしばらくその場で沈黙していた。
「生きてるのか?あいつ」
「死んでくれたほうがあたし的にはありがたいんだけど」
レイのその言葉に稜は同感し、
「そいつは言えてる」
などと口にした。
「残念ながら生きてるぞ」
ブレイブがそういった。稜はブレイブにつかまり窓から飛び降りた。
レイも負けじと持ち前のスピードを生かして階段を一気に駆け下りた。
「オレの心配はなしかよ!!」
キルトのその叫びはまるで負け犬の遠吠えのよう・・・にも聞こえるかもしれない
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